皆さんこんにちは、たたらです。
今回は「なぜ関節が動かしにくくなるのか」についてお話していきたいと思います。
関節可動域が減少する原因を知って、安全な動かし方につなげていきましょう!!
関節可動域(ROM)とは?
関節可動域(以下ROM)とは、関節を自動的または他動的に動かした際の可動範囲のことを言いますが、一般にROM制限とは、関節を他動的に動かした際のROMが「関節可動域表示ならびに測定法」の参考可動域に満たない状態のことを指しています。
ROM制限は、いずれかの問題によって他動的に動かしたROM制限(他動ROM)が制限されることと定義出来ます。
ROM制限の分類
関節周囲軟部組織の変化(Contracture)
①皮膚の癒着や可動性(伸張性)の低下
外傷による傷、手術による術創、裂傷などにより皮膚の癒着や伸張性の低下が起こり、ROMが制限されます。最終可動域感(End Feel)は軟部組織の伸張性であり、皮膚が突っ張った感じがします。
可動域運動時に傷の周囲に痛みを訴えることが多いです。傷の周囲の皮膚を指で押し、癒着を剥がし、伸張性を良くすることが重要になります。(※何の知識もなく押しまくるのは悪化の原因となるので素直に専門家に任せましょう)関節を介さず直接皮膚のストレッチングを行うほうが傷の癒着の剥離に効果的です。
②関節包の癒着や短縮
長期間の固定による関節包の癒着や短縮によりROMが制限されます。End Feelはかなり硬い軟部組織伸張性(最終域で急に硬くなる最終域感)であることが多いです。
低負荷で長時間ストレッチングを行う必要があります。関節包内運動の障害が起こる原因の1つとなります。
③筋緊張増加(筋スパズム)
局所的で持続的な筋緊張の亢進状態(筋スパズム)により、ROMは制限されます。End Feelはスパズム性であり、最終域で急に制限される場合と全体的に筋緊張が亢進している場合があります。持続的な痛みや異常姿勢(アライメントの異常)で起きることが多いです。
痛みやアライメント異常などのスパズムの原因にアプローチしないと直後の可動域が改善するのみで、1.2時間後にはROMは元に戻ることが多いです。
④筋・腱の短縮および筋膜の癒着
ギプス固定、外傷、手術による筋の短縮や筋膜の癒着により、ROMが制限されます。これは、関節包の短縮に起因することが多いです。End Feelは軟部組織伸張性であり、最終域に近づくにあたって除々に抵抗は大きくなります。
筋・腱の短縮および筋膜の癒着はROM制限因子の中でも割合の多い因子となります。治療はスタティックストレッチが適応となります。
⑤関節包内運動の障害
関節の遊び(Joint Play)や構成運動の障害によりROMが制限されます。関節包の短縮に起因することが多いです。End Feelは無抵抗性や軟部組織伸張性、スパズム性、弾性制止性と様々です。
治療は、関節包のストレッチング、関節モビライゼーションが適応となります。
関節構成体の変化
関節構成体の変形などによる骨の衝突により、ROMが制限されます。End Feelは骨性に近くなります。理学療法の対象ではなく、ストレッチングは禁忌となります。
関節内遊離体
関節内遊離体とは、骨折時の骨片の一部や半月板損傷、その他の異物のことです。骨折・脱臼に伴う骨の偏位も当てはまります。
その他
①痛み
手術直後や有痛性の疾患などの痛みによりROMが制限されます。End Feelは無抵抗性です。制限を感じませんが患者の痛みの訴えによりそれ以上他動ROMを増やすことが出来ない場合は、痛みが制限因子となります。
ROMを増やそうとすると防御収縮をおこし、痛みが増加します。痛みが制限因子であるため、痛みを軽減することによりROMは改善しますが、他の新たな制限因子が現れることが多いです。物理療法を用いたり、リラックスさせることが重要です。
②腫脹・浮腫
外傷後の腫脹や様々な原因による浮腫によりROMが制限されます。腫脹や浮腫が強いとEnd Feelは軟部組織接触性に近くなります。腫脹や浮腫を取り除くことがROM獲得に最も重要です。寒冷療法、弾性包帯による圧迫、ハドマー(波動型末梢循環促進装置)を行い、腫れを軽減してからROMが運動を行うことが重要です。
おわりに
如何だったでしょうか?
関節可動域制限の原因を分類分けして、End Feelについてもまとめてみました。単純に関節が動かないと言っても様々な原因がありますので、自分の身体で確認してみるのも重要なことだと思います。
「関節可動域表示ならびに測定法」に関しては、正常ROMというよりは一般的なROMというイメージが強いので、生活に問題ない可動域があれば気にすることはないので安心してください。
今回もお付き合いありがとうございました!
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参考文献
市橋則明, 運動療法学, 文化堂, 2008, p148-150.
David J. Magee et al., 運動器リハビリテーションの機能評価Ⅰ 原著第4版, エルゼビア・ジャパン(株), 2012, p24-26.
David J. Magee et al., Scientific Foundations and Principles of Practice in Musculoskeletal Rehabilitation, SAUNDERS, 2007, p388-91.