皆さんこんにちは、たたらです。今回は関節可動域(ROM)についてお話していきたいと思います。
どこの関節がどこまで動いて、どんな原因で動かなくなるかを知るのは大切ですからね。
順番にみていきましょう!!
正常な関節可動域
大まかな関節の運動だけでも70を超える種類がありますので正常な関節可動域に関しては、日本骨折治療学会の公開しているPDFを参照してください。以下、URLです。
https://www.jsfr.jp/download/info/2021/20211129_03.pdf
関節可動域に影響を与える因子
関節可動域制限はその要因に関わらず、『不動』が直接に影響しています。不動開始当初は筋が最も関与し、その後不動期間の延長に伴い関節包を中心とした関節構成体の割合が増加します。
①年齢
老化に伴って、骨、関節には退行性変化が生じます。成人は幼児に比べて、股関節の屈曲・外転・外旋、足関節の背屈、肘関節の動きが小さくなっています。
さらに、高齢者では、手関節の背屈と掌屈、股関節の回旋、肩関節の回旋のROMが加齢とともに現象します。これらは、手足だけに見られる症状ではなく、脊柱にも影響があります。
②運動の種類
自動運動は対象者の随意筋の滑動によって遂行される運動です。他動運動は、対象者が安楽な(リラックスした)状態で、検者によって関節の可動範囲で行われる運動です。他動運動による関節可動域は自動運動による関節可動域よりもわずかに大きくなります。
③疼痛
痛みはその発生機序から侵害受容性、神経因性、精神心因性の疼痛に分類されますが、関節可動域制限時に関与するものは、筋・靭帯など、関節周囲組織の伸張などによって生じる侵害受容性疼痛が多いです。
関節可動域の依存
①骨と軟骨の形状、②筋力、③筋緊張、④筋の大きさ(軟部組織の衝突)、⑤靭帯の弛緩性、⑥皮膚の硬さ
痛みの原因
①拘縮(皮膚性・筋性・腱性・神経性・関節性)、②強直(線維性・骨性)、③浮腫、④炎症、⑤筋緊張
④拘縮
1. 皮膚性拘縮
皮膚欠損部に対して皮膚の面積が小さい場合や皮膚に伸張性がない場合、皮膚欠損部に中間層植皮が施行され、皮膚の可動性が少ない場合に起こります。
2. 筋性拘縮
阻血・挫滅・骨格筋の短縮や萎縮、長期固定によりおこります。
3. 腱性拘縮
腱の癒着により起こります。
4. 神経性拘縮
神経性拘縮は2種類に分類出来ます。
- 末梢神経麻痺・・・支配筋の麻痺による典型的な変形拘縮を来したもの
- 中枢神経麻痺・・・弛緩性、固縮、痙性によるものがある
5. 関節性拘縮
骨性の拘縮・・・関節周辺の骨折で、骨片が転移したまま変形治癒したことにより、関節運動が障害されます。また、仮骨による関節運動が制限されます。
軟骨性の拘縮・・・関節軟骨が変形し、関節運動が障害されます。
関節構成軟部組織性の拘縮・・・関節を構成する周囲の軟部組織の短縮や癒着が原因で生じる
拘縮の分類
定義「皮膚や皮下組織・骨格筋・腱・靭帯・関節包などの関節周囲軟部組織の器質的な変化に由来した関節可動域制限」これは、筋収縮由来の関節可動域制限は含まれません。
つまり、筋収縮が発生していない状況下で、関節周囲軟部組織の特性である伸張性が低下し、これが原因となって関節可動域制限が認められると拘縮が発生していると結論付けることができます。
拘縮の主原因は結合組織です。中でもその主要構成成分であるコラーゲン線維にあると考えられています。
⑤強直(Ankylosis)
先天性の骨癒合症や関節リウマチなどでみられる、軟骨破壊後の骨性強直などの例外を除いては、関節周囲軟部組織と関節構成体が合併している場合が多く、強直と拘縮を厳密に区別することは難しくなっています。
臨床上では、他動ROMがほとんどもしくは完全に消失した状態を強直と定義しており、その多くは拘縮が進行して生じたものです。
また、強直は関節内外の組織が非可逆的に変化に至っていることが多いため、リハビリテーション医療では改善が難しく、外科的治療の適応となります。
⑥浮腫・炎症
外傷や固定後の浮腫による、局所性の炎症により毛細血管透過性の亢進がおこり、関節組織周辺(関節包・靭帯・筋など)の浮腫が生じます。浮腫による組織への滲出液は組織の線維性変化を引き起こし、組織の柔軟性を低下させます。その結果、関節可動域制限が起こります。
全身性の炎症では主に皮下組織に浮腫が生じますが、浮腫による滲出液は脂肪細胞、皮膚組織の線維化を引き起こす。
⑦筋緊張
痙縮が出現し、筋緊張の亢進に伴う筋の持続的収縮の発生と、運動麻痺による随意的な関節運動の低下により、関節の不動を来たすことが直接的な原因であると考えられています。
筋緊張とは、安静時における骨格筋の硬度や弾力の程度(筋の緊張状態)を指しており、姿勢や精神状態によっても変化します。
筋緊張の亢進は、他動的関節運動によって生じる伸張反射由来の収縮性緊張と、関節を構成する筋や腱などの結合組織の粘弾性によって生じる粘弾性緊張と分類できます。
筋緊張は低下することもあります。筋緊張低下は、筋や膜の張りがなく、筋は垂れ下がって弛緩している状態です。
今回はここまでにしたいと思います。小難しい話が増えてきたと思いますが、自分の身体のことです。負けずに学んでいきましょう!
参考文献
市橋則明, 運動療法学, 文化堂, 2008, p148-150.
David J. Magee, 運動器リハビリテーションの機能評価Ⅰ 原著第4版, エルゼビア・ジャパン(株), 2012, p24-26.